「いのちの車窓から」
を読んだ。いや、正確にはもうすでに読んでいたのだが。
星野源さんのエッセイ「いのちの車窓から」の文庫版が新しく発売され、新たに書き下ろしたエッセイもあるということで、本屋へ。
新たに書き下ろされていた部分に共感できることが多かったので自分もと思い筆を取った。いや、キーボードを叩いた。
聞くと景色を思い出す音楽がある。
もちろん音楽だけではなく、マンガや仕草でも思い出す景色がある。音楽や行動がトリガーになっているんだろう。条件反射ってやつだ。生物で習った。パブロフの犬だ。
The Beatlesの「Hey Jude」を聞くと思い浮かぶ景色がある。
実家は一軒家である。思い出すのはその前に住んでいた二階建ての古いアパート。近くにパン屋があった。日曜日の朝は決まって、そこのパン屋でアンパンマンの顔をしたあんパンを買ってもらった。ガーリックフランスの匂いが破壊的で、大きな一口をもらった記憶もある。
うちの親父はホームビデオをよく撮る。そしてそれを一年分まとめて編集して一枚のDVDにしてたのだが、その時のBGMがこの歌だった。
昔のことを思い出すと「Hey Jude」が頭の中にBGMとして流れるという逆転の発想もある。脳とは便利なものだ。
YELLOW MAGIC ORCHESTRAの「RYDEEN」とゴダイゴの「銀河鉄道999」を聞くと、実家のiMacのデスクトップを思い出す。
親父が好きでよくかけていたのだが、大体シャッフルでかける一番初めの曲をこの二つのどちらかから始めていて、線が幾何学模様を描き続いていくというセンスがあるのかないのかわからない画面にしていたのも今思い出した。
実家のiMacにはかなり本格的なオーディオが付属されていて、内臓のスピーカーとの違いを何度も聴き比べさせられた。親父はハマると何回も同じことを聞いてきた。その度に「やっぱりオーディオはいいね」と答えた。
コブクロの「君という名の翼」を聞くと、小学校の放送室を思い出す。
掃除する時のBGMとして放送委員が流していたのだが、放送室の掃除をしながらCDをかけていた。自分が担当でない日に掃除をサボりに放送室にいって、バレて担当の先生に監視されながら掃除することになる。
放送委員の先生が担任の先生で、元々は確か違う音楽だったはずなのだが(多分涙そうそう)その先生がコブクロが好きで、勝手に「これにしよう」と言って変えてしまった。
結果的にそこからコブクロの良さにハマり、湘南乃風にハマるまでは聴き続けた。
家の近くに住んでいた友達のたいちゃんが、PSPに音源を入れてくれてどこへいく時も一緒に持って出かけ聴きまくった。おかげでカラオケで気持ちよく歌える好きな歌になった。
星野源さんの「SUN」を聞くと、倉庫の中に二段ベッドがある映像が頭の中に浮かんでくる。
これは当時ハマっていたドラマの「心がポキッとね」の主題歌がこの曲で、ドラマの舞台が倉庫だったことが理由だろう。
今までに聴いたことありそうだけど、聴いたことない。
ポップそうな曲調だけど、歌詞には闇が潜んでいる。
それでいて踊りたくなる。
一気に虜になってしまった。
源さんのことを書き出すとそれだけで一つエッセイが書けてしまいそうなので、溢れ出る気持ちをコップの中に戻すことにする。
音楽と景色は繋がっている。
自分としては当たり前のことなのだが、人に話すと驚かれることもある。
だからこそ、今回「いのちの車窓から」を読んで、源さんが同じような感覚を持っていると知って、みぞおちが熱くなった。これが両思いってやつか(多分違う)。
更に、繋がる景色は新しいものに書き換えられる。
旅に出ていろんな景色を記憶に上書きすることが出来る。だからこそ、いろんなところに本を持っていこう。楽しいことも悲しいことも新しいもので塗り替えていこう。
音楽と景色は、更新できる。上書きできる。
いろんな場所で音楽を聴こう。
またみぞおちが熱くなった。